豊川用水、31年ぶりの「緊急取水」が突きつける現実:ダム貯水率2.6%の衝撃とその舞台裏
蛇口をひねれば、当たり前のように水が出る。 私たちが疑うことのないこの日常が、今、東三河で崩壊の危機に瀕しています。
現在、豊川流域は、単なる「雨不足」では片付けられない統計的な異常事態に直面しています。水源地のダムは底を突き、インフラの限界を補うための「外科手術」とも言える緊急措置が、私たちの目に見えないところで進行しています。
1. 31年ぶり、伝説の「平成の大渇水」以来の緊急事態
2026年2月20日、豊川市の三上橋付近において、豊川用水では実に**31年ぶりとなる「緊急取水」**が開始されました。 この措置は、あの「平成の大渇水」の傷跡が残る1995年以来、一世代分もの間、発動されることのなかった異例の事態です。
前日に開催された「緊急対策会議」も、実に13年ぶりの招集。現場には全長10メートルを超える巨大なポンプ車が投入され、河川の生態系維持のために流していた「維持流量」を、物理的な力で無理やり汲み上げる作業が続いています。
2. 貯水率2.6%。主力の「宇連ダム」が底をつく

なぜ、これほど大規模な介入が必要なのか。その理由は水源地の惨状にあります。
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宇連ダム貯水率:2.6%(2026年2月20日時点)
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全水源合計貯水率:12.0%(平年比 約70%)
貯水率2.6%の世界では、かつてダム湖の底に沈んだ旧道が露わになります。通常の取水口からは水が取り込めず、この緊急措置がなければ3月中旬には供給が完全に途絶する恐れがありました。まさに「首の皮一枚」の状況です。
3. 「1月降水量1ミリ」という戦慄のデータ
今回の渇水の決定打となったのは、今年1月の気象データです。 宇連ダム地点における1月の降水量は、わずか1ミリ。平年比でわずか**2%**という、戦後構築されたインフラの想定を遥かに凌駕する「統計的な異常値」です。もはや気候変動の脅威は、私たちの日常のすぐ隣まで迫っています。
前代未聞の「禁じ手」:ダムの底に溜まった水の活用
事態を重く見た中部地方整備局は、豊川用水の歴史上、一度も使われたことのない**「ダムの底に溜まった水(死水容量)」**の活用を決断しました。泥や堆積物が多く含まれるため水質管理が極めて困難ですが、背に腹は代えられない「最後の手段」に踏み切っています。
4. 暮らしへの影響と、私たちができること
現在、以下の厳しい供給制限が続いています。
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農業・工業用水:40%節水
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水道用水:20%節水
キャベツ農家での生育不良や、消防当局による放水訓練の自粛など、社会の根幹が揺らいでいます。
私自身、この危機を重く受け止め、今年に入ってから一度も洗車をしていません。 泥のついた車体を見るたびに、水源の窮状を思い出します。少しの汚れは、私たちの命の水を守っている証。日々の生活の中で、一滴の水を大切にする工夫を私と共に続けていただければ幸いです。
5. 未来への展望:DXと設楽ダムで守る「空白の8年」
この限界を突破するため、現在**「設楽ダム」の建設が進められていますが、完成までにはまだ8年程度の時間**が必要です。
私たちはこの「空白の8年」をどう繋ぐか。 今、私が提言し、推進しているのが**「DX・先端技術を活用した水管理の高度化」**です。
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AI・ICTによる精密管理: AIで配水を最適化し、漏水を早期発見するシステムの導入。
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スマート農業の推進: スマホ等を用いた遠隔・自動給排水制御により、一滴も無駄にしない農業を実現。
「勘と経験」に頼る管理から「データと技術」による管理へ。これが、極端な気候変動から東三河を守る唯一の道です。
結びに
今回の危機は、自然の循環を軽視した「水の消費」から、インフラと生態系を一体として守る「水の循環」へと意識をアップデートする警鐘です。
皆様、引き続きの節水へのご理解とご協力を、心よりお願い申し上げます。